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 本章では,総合的な学習の時間において,どのような学習指導を行うことが求められているのかを記していく。

 まず,本章第1節では,学習指導の基本的な考え方を「児童の主体性の重視」,「適切な指導の在り方」,「具体的で発展的な教材」の三つから記述していく。

 そして,本章第2節では,総合的な学習の時間における「主体的・対話的で深い学び」について述べる。

 さらに,本章第3節では,これらの考え方を受け,学習指導の際のポイントを「探究的な学習の過程」に沿って具体的に解説していく。

 総合的な学習の時間の学習指導の第1の基本は,学び手としての児童の有能さを引き出し,児童の発想を大切にし,育てる主体的,創造的な学習活動を展開することである。

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 児童は本来,知的好奇心に富み,自ら課題を見付け,自ら学ぶ意欲をもった存在である。

 児童は,具体的な事実に直面したり様々な情報を得たりする中で,対象に強い興味や関心をもつ。

 また,実際に体験したり調査したりして,繰り返し対象に働きかけることで,対象への思いを膨らませていく。

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 さらに,児童は未知の世界を自らの力で切り開く可能性を秘めた存在である。

 興味ある事象についての学習活動に取り組む児童は,納得するまで課題を追究し,本気になって考え続ける。

 この学習の過程において,児童はよりよく課題を解決し,自己の生き方を考えていくための資質・能力を育んでいく。

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 こうした児童がもつ本来の力を引き出し,それを支え,伸ばすように指導していくことが大切であり,そうした肯定的な児童観に立つことが欠かせない。

 しかし,児童の主体性を重視するということは,教師が児童の学習に対して積極的に関わらないということを意味するものではない。

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 例えば,児童の主体性が発揮されている場面では,児童が自ら変容していく姿を見守ることが大切である。

 また,児童の取組が停滞したり迷ったりしている場面では,適切な指導が必要である。

 そのようにして,児童のもつ潜在的な力が発揮されるような学習指導を行うことが大切である。

 
 

 学習指導の第2の基本は,探究課題に対する考えを深め,資質・能力の育成につながる探究的な学習となるように,教師が適切な指導をすることである。

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 第1の基本に示したように,原則としては児童のよさや可能性を引き出し,それを支え,伸ばすことが重要である。

 そこでは,児童の主体的な取組を重視する。

 しかし,それだけでは学習の広がりや深まりは期待できない。

 そこで,3で述べる適切な教材が用意されていることが大切であり,さらに,探究的な学習として展開していくように,教師が指導性を発揮することが重要である。

 どのような体験活動を仕組み,どのような話合いを行い,どのように考えを整理し,どのようにして表現し発信していくかなどは,まさに教師の指導性にかかる部分であり,児童の学習を活性化させ,発展させるためには欠かせない。

 こうした教師の指導性と児童の自発性・能動性とのバランスを保ち,それぞれを適切に位置付けることが豊かで質の高い総合的な学習の時間を生み出すことにつながる。

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 そのためには,児童の状況や教材の特質に応じて,教師がどのような意図をもって展開していくかが問われる。

 学習を展開するに当たって,教師自身が明確な考えをもち,期待する学習の方向性や望ましい変容の姿を想定しておくことが不可欠である。

 学習活動のイメージをもつことで,どのような場面でどのように指導するのかが明らかになる。

 また,児童の望ましい変容の姿を想定しておくことで,学習状況に応じた適切な指導も可能になる。

 
 

 学習指導の第3の基本は,身近にある具体的な教材,発展的な展開が期待される教材を用意することである。

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 総合的な学習の時間では,児童の自主性や自発性を重視し,児童の思いや願いを大切にすることを記してきた。

 しかし,充実した学習活動を展開し,学習を深め,児童が探究課題の解決を通して育成を目指す具体的な資質・能力を身に付けていくためには,2で述べたように適切な教材(学習材)が用意されていることが欠かせない。

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 教材は,探究的な学習として質の高い学習活動が展開されるように,児童の学習を動機付けたり,方向付けたり,支えたりするものであることが望まれる。

 児童の興味・関心をこれまで以上に重視しながら,児童の身の回りの日常生活や社会にある事物や現象を適切に取り上げ,児童にとって学ぶ価値のある教材としていくことが重要である。

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 総合的な学習の時間の教材には,以下の特徴があることが求められる。

 一つには,児童の身近にあり,観察したり調査したりするなど,直接体験をしたり繰り返し働きかけたりすることのできる具体的な教材であることである。

 総合的な学習の時間は,探究的な学習の過程に体験活動を適切に位置付けることが重要であり,そうした中で行われる全身を使った対象の把握と情報の収集が欠かせない。

 総合的な学習の時間においては,間接的な体験による二次情報も必要ではあるが,より優先すべきは,実物に触れたり,実際に行ったりするなどの直接体験であることは言うまでもない。

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 二つには,児童の学習活動が豊かに広がり,発展していく教材であることである。

 児童は,実社会や実生活とのつながりのある具体的な活動や体験を行うことによって意欲的で前向きな姿勢となる。

 そのため,一つの対象から,次々と学習活動が展開し,自然事象や社会事象へと多様に広がり,学習の深まりが生まれることが大切である。

 また,生活の中にある教材であっても,そこから広い世界が見えてくるなど,身近な事象から現代社会の課題等に発展していくことが期待される。

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 このように,総合的な学習の時間における教材は,実際の生活の中にある問題や事象を取り上げることが効果的である。

 例えば,食生活の問題を取り上げたとしても,そこから自然環境の問題や労働問題,食料自給率の問題などが見えてくる。

 身近にある具体的な教材,発展的な展開が期待される教材であることが望まれる。

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 三つには,実社会や実生活について多面的・多角的に考えることができる教材であることである。

 身近な事象や現代社会の課題等には,様々な捉え方や考え方ができるものがあり,それらについて特定の立場や見方に偏った取扱いがされているような教材は適切ではない。

 
 
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