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 本解説第2章第2節で示したように,探究的な学習とは,日常生活や社会に生起する複雑な問題について,その本質を探って見極めようとする学習のことであり,問題解決的な活動が発展的に繰り返されていく一連の学習活動のことである。

 前回の改訂では,総合的な学習の時間を探究的な学習とするために,「課題の設定」,「情報の収集」,「整理・分析」,「まとめ・表現」の学習過程が繰り返される中で,児童の資質・能力が育ち,学習が更に高まっていくことが重要であることが示された。

 そして,その過程の中で,実社会や実生活と関わりのある学びに主体的に取り組んだり,異なる多様な他者との対話を通じて考えを広めたり深めたりする学びを実現することが大切にされてきた。

 したがって,総合的な学習の時間において「主体的・対話的で深い学び」の視点による授業改善を重視することは,探究的な学習の過程をより一層質的に高めていくことにほかならない。

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 なお,今回の改訂で重視される「主体的な学び」,「対話的な学び」,「深い学び」の三つの視点は,子供の学びとしては一体として実現されるものであり,また,それぞれ相互に影響し合うものでもある。

 単元のまとまりの中で,それぞれのバランスに配慮しながら学びの状況を把握し改善していくことが求められる。

 以下,探究的な学習の過程における「主体的・対話的で深い学び」の実現について具体的に解説する。

 
 

 「主体的な学び」とは,学習に積極的に取り組ませるだけでなく,学習後に自らの学びの成果や過程を振り返ることを通して,次の学びに主体的に取り組む態度を育む学びである。

 これまでも,総合的な学習の時間においては,学習したことをまとめて表現し,そこからまた新たな課題を見付け,更なる問題の解決を始めるといった学習活動を発展的に繰り返していく過程を重視してきた。

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 こうした学習過程の中で児童が主体的に学んでいく上では,課題設定と振り返りが重要となる。

 課題設定については,児童が自分の事として課題を設定し,主体的な学びを進めていくようにするために,実社会や実生活の問題を取り上げることが考えられる。

 また,学習活動の見通しを明らかにし,学習活動のゴールとそこに至るまでの道筋を鮮明に描くことができるような学習活動の設定を行うことも大切になる。

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 一方,振り返りについては,自らの学びを意味付けたり,価値付けたりして自覚し,他者と共有したりしていくことにつながる。

 言語によりまとめたり表現したりする学習活動として,文章やレポートに書き表したり,口頭で報告したりすることなどを行うことが考えられる。

 特に,文字言語によってまとめることは,学習活動を振り返り,体験したことと収集した情報や既有の知識とを関連させ,自分の考えとして整理する深い理解につながっていく。

 なお,振り返りは必ずしも単元の最後に行うとは限らない。

 時には探究の過程において,途中で一旦立ち止まって振り返って考え直してみるということも,主体的な学びという視点からは意義があるものと考えられる。

 
 

 「対話的な学び」とは,他者との協働や外界との相互作用を通じて,自らの考えを広げ深めるような学びである。

 以前より,総合的な学習の時間では,他者とともに探究的な学習に取り組むことを大切にしてきたように,探究的な学習の過程を質的に高めていくためには,引き続き異なる多様な他者と力を合わせて課題の解決に向かうことが欠かせない。

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 ここで行われる異なる多様な他者と対話することには,次の三つの価値が考えられる。

 一つは,他者への説明による情報としての知識や技能の構造化である。

 児童は身に付けた知識や技能を使って相手に説明して話すことで,つながりのある構造化された情報へと変容させていく。

 二つは,他者からの多様な情報収集である。

 多様な情報が他者から供給されることで,構造化は質的に高まるものと考えられる。

 三つは,他者とともに新たな知を創造する場の構築と課題解決に向けた行動化への期待などである。

 実際の授業場面では,情報の質と量,再構成の方法等に配慮して具体的な学習活動や学習形態,学習環境として用意する必要がある。

 例えば,「考えるための技法」を意識的に使っていくことなどは,対話的な学びを確かに実現していくものと期待できる。

 なぜなら,情報が「可視化」され「操作化」されることで,児童が自ら学び共に学ぶ姿が具現化されるからである。

 こうした授業改善の工夫により,思考を広げ深め,新たな知を創造する児童の姿が生まれると考えられる。

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 一方で,協働的な学習はグループとして結果を出すことが目的ではなく,その過程を通じて,一人一人がどのような資質・能力を身に付けるかということが重要である。

 グループとして考えるだけでなく,一人一人が学習の見通しをもったり,振り返ったりすることが求められる。

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 なお,「対話的な学び」は,学校内において他の児童と活動を共にするということだけではなく,一人でじっくりと自己の中で対話すること,先人の考えなどと文献で対話すること,離れた場所をICT機器などでつないで対話することなど,様々な対話の姿が考えられる。

 
 

 「深い学び」については,探究的な学習の過程を一層重視し,これまで以上に学習過程の質的向上を目指すことが求められる。

 探究的な学習の過程では,各教科等で身に付けた「知識及び技能」,「思考力,判断力,表現力等」の資質・能力を活用・発揮する学習場面を何度も生み出すことが期待できる。

 それにより,各教科等で身に付けた「知識及び技能」は関連付けられて概念化し,「思考力,判断力,表現力等」は活用場面と結び付いて汎用的なものとなり,多様な文脈で使えるものとなることが期待できる。

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 また,このように充実した学習の過程において,児童は手応えをつかみ前向きで好ましい感覚を得ることが期待できる。

 そのことが,更なる学習過程の推進に向かう安定的で持続的な意志を涵養していく。

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 総合的な学習の時間における探究的な学習の過程が充実することにより,各教科等で育成された資質・能力は繰り返し活用・発揮される。

 そのことによって,生きて働く知識及び技能として習得され,未知の状況にも対応できる思考力,判断力,表現力等が育成され,学びを人生や社会に生かそうとする学びに向かう力,人間性等の涵養につながるのである。

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 探究的な学習の各段階において,「深い学び」の視点を意識するために大切と考えられるポイントは次節において解説する。

 
 
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