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 児童の学習状況を評価することで,児童一人一人が,どのように成長しているか,資質・能力が確かに育成されているかどうかを捉えていくことになる。

 加えて,教師が児童のよい点や進歩の状況などを積極的に評価することにより,児童自身が学習したことの意義や価値を実感できるようにすることも肝要である。

 総合的な学習の時間の評価については,各学校が自ら設定した観点の趣旨を明らかにした上で,それらの観点のうち,児童の学習状況に顕著な事項がある場合などにその特徴を記入する等,児童にどのような資質・能力が身に付いたかを文章で記述することとしている。

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 今回の改訂においても,学習指導要領が定める目標(第1の目標)を踏まえて各学校が目標や内容を設定するという総合的な学習の時間の特質から考えると,各学校が観点を設定するという枠組みは維持する必要がある。

 学習指導要領に示された総合的な学習の時間の目標(第1の目標)を踏まえ,各学校の目標,内容に基づいて定めた観点による観点別学習状況の評価を基本とすることが考えられる。

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 各学校においては,第1の目標を踏まえ,各学校が総合的な学習の時間の目標を定める。

 この目標を実現するにふさわしい探究課題と探究課題の解決を通して育成を目指す具体的な資質・能力を示した内容が設定される。

 この目標と内容に基づいた観点を,各学校において設定することが考えられる。

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 ここでは,特に,探究課題の解決を通して育成を目指す具体的な資質・能力について,第5章第2の3の(6)において,

ア 知識及び技能については,他教科等及び総合的な学習の時間で習得する知識及び技能が相互に関連付けられ,社会の中で生きて働くものとして形成されるようにすること。

イ 思考力,判断力,表現力等については,課題の設定,情報の収集,整理・分析,まとめ・表現などの探究的な学習の過程において発揮され,未知の状況において活用できるものとして身に付けられるようにすること。

ウ 学びに向かう力・人間性等については,自分自身に関すること及び他者や社会との関わりに関することの両方の視点を踏まえること。

 とされていることに配慮することが大切である。

 
 

 総合的な学習の時間における児童の学習状況の評価に当たっては,これまでと同様に,ペーパーテストなどの評価の方法によって数値的に評価することは,適当ではない。

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 具体的な評価については,各学校が設定する評価規準を学習活動における具体的な児童の姿として描き出し,期待する資質・能力が発揮されているかどうかを把握することが考えられる。

 その際には,具体的な児童の姿を見取るに相応しい評価規準を設定し,評価方法や評価場面を適切に位置付けることが欠かせない。

 特に,総合的な学習の時間においては,年間や単元など内容や時間のまとまりを見通しながら評価場面や評価方法を工夫し,指導の改善や児童の学習意欲の向上を図り,資質・能力の育成に生かすようにすることが重要である。

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 評価規準を設定する際の基本的な考え方や作業手順は以下のように考えることができる。

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 まず,各学校の全体計画や単元計画を基に,単元で実現が期待される育成を目指す資質・能力を設定する。

 本解説第2章で説明したように,総合的な学習の時間の目標や内容について各学校が設定する際には,年間や単元を通してどのような資質・能力を育成することを目指すかを設定することとしている。

 このため,評価規準については,年間や単元を通して育成したい資質・能力をそのまま当てはめることができる。

 そして,各観点に即して実現が期待される児童の姿が,特に実際の探究的な学習の場面を想起しながら,単元のどの場面のどのような学習活動において,どのような姿として実現されるかをイメージする。

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 総合的な学習の時間における
 児童の具体的な学習状況の評価
 の方法については,

 信頼される評価の方法であること,
 多面的な評価の方法であること,
 学習状況の過程
 を評価する方法であること,

 の三つが重要である。

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 第1に,信頼される評価とするためには,教師の適切な判断に基づいた評価が必要であり,著しく異なったり偏ったりすることなく,およそどの教師も同じように判断できる評価が求められる。

 例えば,あらかじめ指導する教師間において,評価の観点や評価規準を確認しておき,これに基づいて児童の学習状況を評価することなどが考えられる。

 この場合には,各学校において定められた評価の観点を,1単位時間で全て評価しようとするのではなく,年間や,単元などの内容のまとまりを通して,一定程度の時間数の中において評価を行うように心がける必要がある。

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 第2に,児童の成長を多面的に捉えるために,多様な評価方法や評価者による評価を適切に組み合わせることが重要である。

 多様な評価の方法としては,例えば次のようなものが考えられる。

 いずれの方法も,児童が総合的な学習の時間を通して資質・能力を育てることができているかどうかを見ることが目的である。

 成果物の出来映えをそのまま総合的な学習の時間の評価とすることは適切ではなく,その成果物から,児童がどのように探究の過程を通して学んだかを見取ることが大事である。

・ 発表やプレゼンテーションなどの表現による評価

・ 話合い,学習や活動の状況などの観察による評価

・ レポート,ワークシート,ノート,絵などの制作物による評価

・ 学習活動の過程や成果などの記録や作品を計画的に集積したポートフォリオを活用した評価

・ 評価カードや学習記録などによる児童の自己評価や相互評価

・ 教師や地域の人々等による他者評価 など

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 第3に,学習状況の結果だけではなく過程を評価するためには,評価を学習活動の終末だけではなく,事前や途中に適切に位置付けて実施することが大切である。

 学習活動前の児童の実態の把握,学習活動中の児童の学習状況の把握と改善,学習活動終末の児童の学習状況の把握と改善という,各過程に計画的に位置付けられることが重要である。

 また,全ての過程を通して,児童の実態や学習状況を把握したことを基に,適切な指導に役立てることが大切である。

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 なお,総合的な学習の時間では,児童に個人として育まれるよい点や進歩の状況などを積極的に評価することや,それを通して児童自身も自分のよい点や進歩の状況に気付くようにすることも大切である。

 グループとしての学習成果に着目するのではなく,一人一人の学びや成長の様子を捉える必要がある。

 そうした評価を行うためには,一人一人が学習を振り返る機会を適切に設けることが重要である。

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 今後は,教師一人一人が,児童の学習状況を的確に捉えることが求められる。

 そのためには,評価の解釈や方法等を統一するとともに,評価規準や評価資料を検討して妥当性を高めること(モデレーション)などにより,学習評価に関する力量形成のための研修等を行っていくことも考えられる。

 
 
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