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 総合的な学習の時間に児童が意欲的に取り組み,そこでの学習を深めていくには,学習環境が適切に整えられていなければならない。

 総合的な学習の時間では,多様な学習活動が行われるため,児童の資質・能力が十分に発揮されるような学習環境を整えなければならない。

 そこで,本節では,学校全体で整備しておかなければならない施設・設備等の物的な環境整備の在り方,及び教室内の学習環境の整備について要点を述べる。

 総合的な学習の時間では,探究的な学習の過程で,学級内はもちろん,学年内,さらには異学年間での学習活動などが展開されることがある。

 また,ものづくりや発表のための準備など,多様な学習活動が行われる。

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 こうした学習活動を行う際,教室以外にも学習活動を行うスペースが確保されていると,スムーズに展開しやすい。

 例えば,多目的スペースなどにミーティングテーブルを設置したり移動黒板を用意したりするなど,多様な学習形態に対応できる空間を確保する工夫が考えられる。

 校内に余裕教室がある場合などは,学習目的に応じて有効に活用することが望まれる。

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 このような学習スペースには,総合的な学習の時間の学習活動の流れ図や活動の記録写真などを展示したり児童の作品を展示したりして,学習への関心や意欲を高めることができる。

 また,総合的な学習の時間に活用する教材や資料,実物や模型などを展示し,いつでも児童が活用できるように用意しておくこと,児童の学習活動に必要な道具や材料などを常備しておくことなども考えられる。

 
 

 教室内には,総合的な学習の時間の学習活動の経過や写真などを掲示したり,総合的な学習の時間の学習履歴や成果を展示したりすることが考えられる。

 そうすることで,実際に行ってきた学習活動の一つ一つが共有され,総合的な学習の時間での取組への関心が高まる。

 このことは,学習への関心や意欲を高めるだけではなく,学習を対象化して振り返り,自らの学びを意味付けたり価値付けたりして,次への学びへと向かうことにもつながる。

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 また,学習履歴をポートフォリオとして蓄積したファイルや関係する書籍や資料などを活用しやすいように配置することも大切である。

 テレビモニターやプロジェクターなどで拡大して資料を確認したり,コンピュータを使って情報を収集したりすることができるような学習環境を構成することも考えられる。

 教室内の学習環境については,児童の探究的な学びが促進される学びの場となるよう整備することが大切である。

 
 

 学習の中で疑問が生じたとき,
 身近なところで
 必要な情報を収集し活用できる環境を
 整えておくことは,
 探究的な学習に
 主体的に取り組んだり,
 学習意欲を高めたりする上で
 大切な条件であり,

 その意味からも
 学校図書館は,

 児童の想像力を培い,
 学習に対する興味・関心等を
 呼び起こし,
 豊かな心や人間性,教養,創造力
 等を育む
 自由な読書活動や読書指導の場
 である「読書センター」や

 児童の
 自発的・主体的・協働的な学習活動
 を支援したり,
 授業の内容を豊かにして
 その理解を深めたりする
 「学習センター」,

 さらには,
 児童や教職員の情報ニーズに
 対応したり,
 児童の情報の収集・選択・活用能力を
 育成したりする
 「情報センター」

 としての機能を担う
 中核的な施設である。

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 そのため,学校図書館には,総合的な学習の時間で取り上げるテーマや児童の追究する課題に対応して,関係図書を豊富に整備する必要がある。

 学校図書館だけでは蔵書に限りがあるため,自治体の中には,公立図書館が便宜を図り,学校での学習状況に応じた図書の拡充を行っているところや,学校が求める図書を定期的に配送するシステムを採っているところもある。

 地域と一体となって学習・情報センターとしての機能を高めたい。

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 学校図書館では,児童が必要な図書を見付けやすいように日頃から図書を整理したり,コンピュータで蔵書管理したりすることも有効である。

 図書館担当は,学校図書館の物的環境の整備を担うだけでなく,参考図書の活用に関わって児童の相談に乗ったり必要な情報提供をしたりするなど,児童の学習を支援する上での重要な役割が期待される。

 教師は全体計画及び年間指導計画に学校図書館の活用を位置付け,授業で活用する際にも図書館担当と十分打合せを行っておく必要がある。

 加えて,こうした学校図書館の環境を,児童が自ら活用できるようにしたい。

 そのためには,どこに行けばどのような資料が入手できるのか,どのような観点から必要な情報を探すのかといったことができるようになる必要がある。

 このことは,国語科における読書指導や特別活動における主体的な学習態度の形成と学校図書館の活用に係る指導と緊密に関連付け,成果を上げていく工夫も大切である。

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 一方,総合的な学習の時間において児童が作成した発表資料や作文集などを,学校図書館等で蓄積し閲覧できるようにしておくことも,児童が学習の見通しをもつ上で参考になるだけでなく,優れた実践を学校のよき伝統や校風の一つにしていく上で有効である。

 
 

 タブレット型端末を含むコンピュータをはじめとする情報機器は,その有効な活用によって,総合的な学習の時間における児童の情報検索や情報活用,情報発信の可能性を広げ,学習意欲や学習効果の向上に役立つ。

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 コンピュータ等の情報機器が集中してコンピュータ室に配置されている場合には,コンピュータ室を有効に活用できるよう,適切に調整する必要がある。

 その際,例えば,2週間単位程度で利用希望調査を行って調整を図るなどして,できる限り児童の学習状況に応じる工夫もある。

 また,複数の学級が同時に使えるように,コンピュータ等を余裕教室等に分散配置する方法も考えられる。

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 一方,コンピュータ室だけでなく,教室やオープンスペース等にインターネットへの接続環境を整えておくことで,児童が必要なときに直ちに調査活動に当たることができる。

 また,校内にサーバーを設置し,全てのコンピュータを接続することで,デジタルコンテンツを共有したり,児童が取材した写真やビデオなどを蓄積したりすることにつながる。

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 学校によっては,コンピュータ室が日常的に利活用できない状況もあるが,児童が適切に利用できるよう指導した上で,コンピュータ室を昼休みや放課後等も開放し,児童が積極的に利用できるようにしておきたい。

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 なお,情報環境の整備については,「児童を守る」という視点も重要である。

 様々な情報に接し,自らも生み出し,共有していくことが求められる社会の中で,安心・安全に情報の利活用を行うことができる情報セキュリティの確立や,情報モラルを含めた情報活用能力を身に付けていくことが必要である。

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 さらに,児童による調査活動の記録のため,デジタルカメラやデジタルビデオカメラ,タブレット型端末やICレコーダーなどを整備しておく必要がある。

 発表活動を効果的に行うために,音声や映像の編集,プレゼンテーション等のソフトやプロジェクターなどを整備しておくことも望まれる。

 また,児童間の情報共有や協働的な学習を促すためには,複数の児童が同じ画面を見ながらそれぞれのアイデアを記入することができるようなツールや他の児童の考えにコメントを付けられるような仕組みを用いることも考えられる。

 ワープロや表計算だけでなく,アイデアを視覚的に表したり整理したりできるようなソフトも有効である。

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 こうした機器等の物的条件整備のほか,校内研修や地域の教育センター等による研修を通して,教師のICT活用指導力を高めておくことが大切である。

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 また,プログラミング教育の実施に当たっては,ICT 環境の整備はもちろん,教員研修の充実や民間と連携した指導体制の確保などを行っていく必要がある。

 なお,学習活動を行うに当たっては,プログラミング的思考を育むことを目指し,プログラミングを体験することが探究的な学習の過程に適切に位置付くようにしなければならない。

 
 
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