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 今回の改訂では,小・中・高等学校を通じて資質・能力を育成する観点から,従前の「資料の活用」の領域の名称を「データの活用」に改め,領域の構成は「数と式」,「図形」,「関数」及び「データの活用」の四つの領域とした。

 なお,各学年の内容に〔数学的活動〕を従前どおり位置付けており,その指導に関わる配慮事項を「第3 指導計画の作成と内容の取扱い」に示した。

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 中学校数学科の内容の構成については,「知識及び技能」の学年別,領域別の概略を図1(12,13ページ)で示し,小学校算数科の内容の構成についても,図2(14〜17ページ)で示している。

 また,小学校算数科・中学校数学科を通した資質・能力(「思考力,判断力,表現力等」,「学びに向かう力,人間性等」)についても,図3(18,19ページ)で示している。

 
 
 中央教育審議会答申では,算数科・数学科の指導内容の示し方の改善について,次のように示されている。

○ 「内容」に関しては,育成を目指す「知識・技能」,「思考力・判断力・表現力等」がより明確となり,それらを育成するための学習過程の改善が図られるよう,どのような「数学的な見方・考え方」を働かせて数学的活動を行い,どのような「知識・技能」及び「思考力・判断力・表現力等」を身に付けることを目指すのかを示していくことが必要である。

 その上で,「内容」の系統性,「内容」と育成される資質・能力とのつながり及びこれまでに明らかになっている課題などを意識した「内容」の構成,配列にすることが求められる。

 このことを踏まえ,数学科の内容については,生徒が身に付けることが期待される資質・能力を三つの柱に沿って整理し,「知識及び技能」,「思考力,判断力,表現力等」については指導事項のまとまりごとに内容を示した。

 また,「学びに向かう力,人間性等」については,指導事項のまとまりごとに内容を示すことはせず,教科の目標及び学年目標において,まとめて示した。

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 なお,今回の改訂では,主として日常生活や社会の事象に関わる過程と,数学の事象に関わる過程の二つの問題発見・解決の過程を重視したため,「思考力,判断力,表現力等」を身に付けるに当たり,多くの場合でこの二つの過程が活動を通して実現されるよう示し方を工夫した。

 また,「思考力,判断力,表現力等」は,数量や図形などに関する問題場面について思考する過程や,その結果得られた事実や方法,判断の根拠などを数学的な表現を用いて伝え合う等の言語活動を通じて身に付けることとし,それらによって養われる力は,「〜を考察し表現すること」や「〜を具体的な場面で活用すること」などの表現を用いて示した。

 なお,「具体的な場面」とは,日常生活や社会の事象及び数学の事象における様々な場面を含んでいる。

 
 

 中央教育審議会答申では,算数科・数学科の教育内容の改善・充実について,次のように示されている。

○ 算数・数学を学ぶことは,問題解決の喜びを感得し,人生をより豊かに生きることに寄与するものと考えられる。

 また,これからの社会を思慮深く生きる人間を育成することにも大きく貢献すると考えられる。

 このため,数学と人間との関わりや数学の社会的有用性についての認識が高まるよう,十分に配慮した内容としていくことが求められる。

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○ これからの時代を生き抜くため,米国等ではSTEM(Science, Technology, Engineering and Mathematics)教育の推進が図られており,その基盤に数学が位置付けられている。

 数学には,諸事象に潜む数理を見いだし,それを的確に表現することへの大きな期待が寄せられている。

 また,PISA調査の読解力の定義が,読むテキストの形式として物語,論説などの「連続テキスト」と,表,図,ダイヤグラムなどの「非連続テキスト」があり,両者を含めて読む対象とするとして,より広い言語観に立って規定されているなど,言語としての数学の特質が一層重視されてきており,このことに配慮する必要がある。

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○ また,社会生活などの様々な場面において,必要なデータを収集して分析し,その傾向を踏まえて課題を解決したり意思決定をしたりすることが求められており,そのような能力を育成するため,高等学校情報科等との関連も図りつつ,小・中・高等学校教育を通じて統計的な内容等の改善について検討していくことが必要である。

 そこで,中学校数学科では,引き続き,言葉や数,式,図,表,グラフなどの数学的な表現を用いて,論理的に考察し表現したり,その過程を振り返って考えを深めたりする学習活動を重視した。

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 また,急速に発展しつつある情報化社会においては,多くの人が,様々なデータを手にすることができるようになってきており,データを用いて問題解決する場面も多くみられるようになってきている。

 そこで,データを用いて問題解決するために必要な基本的な方法を理解し,これを用いてデータの傾向を捉え説明することを通して,問題解決する力を養うことができるようにする必要がある。

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 今回の改訂において,小学校算数科では,度数分布を表やグラフに表したり,データの平均や散らばりを調べるなどの活動を通して,統計的に考察したり表現したりすることとしている。

 また,量的データの散らばりの様子や代表値の意味を捉えやすくするための方法としてドットプロットが導入され,ドットプロットからデータの特徴や傾向を読み取ったり,最頻値や中央値を見付けたりできるようにしている。

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 そこで,中学校数学科では,上述を踏まえて統計的な内容を充実させた。

 具体的には,第1学年で,従前どおりヒストグラムや相対度数を扱うとともに,第2学年で,四分位範囲や箱ひげ図を新たに扱うこととし,収集したデータから次第に情報を縮約することによって,大量のデータや複数の集団の比較が可能となるよう構成した。

 また,それぞれの学年において学んだ統計的な表現を関連付けながら統計的に問題解決することによって,より深い統計的な分析が可能となるように構成した。

 さらに,確率の学習内容についても,第1学年は,多数の観察や多数回の試行によって得られる確率,第2学年は,場合の数を基にして得られる確率を扱い,第3学年においては,標本調査のアイデアを導入することで,統計的なデータと確率的なばらつきを統合した形で確率の理解を深めることができるようにした。

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 このように,中学校の各学年で統計的なデータと確率を学習することによって,統計的に問題解決する力を次第に高めていくことができるよう構成した。

 
 

 基礎的・基本的な知識及び技能の習得と思考力,判断力,表現力等の育成を図るために,小学校算数科において学習したことを素地(そじ)として中学校において活用できるようにするとともに統計教育を充実させたことなどを踏まえて,一部の内容の指導時期を改めた。

 小・中学校間で移行された内容,中学校において学年間で移行された内容及び中学校において新たに指導することになった内容は次のとおりである。

(注意)

○…中学校の学年間で移行する内容
◎…中学校で新規に指導する内容
◆…中学校から小学校へ移行する内容
◇…小学校から中学校へ移行する内容

[第1学年]

◇用語「素数」 ←小学校第5学年から

○自然数を素数の積として表すこと
    ←中学校第3学年から

◆用語「平均値,中央値,最頻値,階級」
    →小学校第6学年へ

◎用語「累積度数」

○多数の観察や多数回の試行によって得られる確率 ←中学校 第2学年から

○誤差や近似値,a×10n の形の表現
    →中学校第3学年へ

[第2学年]

◎用語「反例」

◎四分位範囲や箱ひげ図

○多数の観察や多数回の試行によって得られる確率 →中学校第1学年へ

[第3学年]

○自然数を素因数に分解すること
   →中学校第1学年へ

○誤差や近似値,a×10n の形の表現
   ←中学校第1学年から

 
 
 
 
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