cosnavi.jp

 次に示す事項について,日本語と英語の語順の違い等に気付かせるとともに,基本的な表現として,意味のある文脈でのコミュニケーションの中で繰り返し触れることを通して活用すること。

 文とは主語と述語から成るまとまりである。文は語や句によって構成される。

 文の種類として,平叙文や疑問文,命令文などがある。文構造とは文の構成要素の関係を示したものである。

 文構造の記述には,文の構成要素を示すために主語や動詞,目的語,補語の用語を用いる。

--------------------------------

 「文型」ではなく「文構造」という用語を用いているが,これは,文を「文型」という型によって分類するような指導に陥らないように配慮し,また,文の構造自体に目を向けることを意図してより広い意味で「文構造」という用語を用いたものである。

--------------------------------

 文及び文構造については,第2の2(3)@で示すような言語活動の中で,文法の用語や用法の指導を行うのではなく日本語と英語の語順の違い等の気付きを促すようにしたり,基本的な表現として繰り返し聞いたり話したりするなどして活用したりすることが求められる。

 繰り返し触れることによって英語の語順に気付かせ,その規則性を内在化させたり,自ら話したり書いたりする中でどのように語と語を組み合わせれば自分の伝えたいことが表現できるのかということに意識を向けさせたりするようにする。

--------------------------------

 中学校の外国語科においては,「文及び文構造」に文法事項が加えられ「文,文構造及び文法事項」として指導することとしているが,小学校の外国語科においては,示されている文及び文構造について基本的な表現として指導することが意図されている。

 例えば,小学校の外国語科においては,得意なものを紹介し合う活動においてI am good at playing tennis. という表現に触れて,その意味を把握したり,自ら活用したりするが,「代名詞」の用法や「動名詞」の用法について理解し活用するのは中学校の段階で扱う。

 
 
 文は以下に示すものを扱うこととする。
 
 

 文は,単文を指導する。

--------------------------------

 文の中に主語と述語の関係が一つだけ含まれるものが単文である。

 以下に単文の例を示す。

 I want a new ball.

 I'm happy.

 She can play baseball well.

--------------------------------

 高学年の外国語科においては,中学年の外国語活動において慣れ親しんだ基本的な表現を含む単文を繰り返し指導することとする。

--------------------------------

 重文と複文は主語と述語の関係が文の中に複数存在し,複雑な構造であるため,小学校の外国語科においては取り扱わず,中学校の外国語科において指導する内容とする。

 重文は単文と単文が and,but,or などの接続詞によって並列的に結ばれた文であり,複文は because,when,that などの接続詞を含む従属節を含む文である。

--------------------------------

 重文の例

 I went to Okinawa with my family,
  and we enjoyed swimming.

 I don't like baseball,
  but I like soccer.

--------------------------------

 複文の例

 I want to be a vet
  because I like animals.

 When I visited Tomoko,
  she was listening to music.

 I think that you like baseball.

 
 

 肯定,否定の平叙文を指導する。平叙文は,通常,事実などを伝える文であり,文末に終止符を付ける文である。

--------------------------------

 肯定文は英語の基本的な語順を学ぶ上で基礎となるものであり,その特徴を十分理解させる必要がある。

--------------------------------

 否定文は否定語や語形の変化などを伴うことが多いので,肯定文との違いを理解させるように指導する必要がある。

--------------------------------

 肯定文の例

 I play baseball.

 He is a good soccer player.

 She can swim fast.

--------------------------------

 否定文の例

 I don't like soccer very much.

 She isn't a teacher.

 I can't play the piano.

 
 

 命令文についても肯定文と否定文を指導する。

 肯定の命令文は,主語を示さず,動詞の原形を使用する。

 また,否定の命令文は,主語を示さず,Don't の後に動詞の原形を使用する。be動詞の場合には,is,am,are ではなく,原形のbe が用いられる。

--------------------------------

 小学校の外国語科においては,一般動詞とbe動詞の用法の点から命令文の特徴を理解させるのではなく,命令文を基本的な表現として扱い,繰り返し触れさせたり,活用させたりするようにする。

 その際,第2の1(3)「話すこと[やり取り]」アで示されている「基本的な表現を用いて指示,依頼をしたり,それらに応じたりすることができるようにする」という目標を達成するのにふさわしいものを扱うようにする。

--------------------------------

 肯定文の例

 Go straight for three blocks.

 Please be quiet, David.

--------------------------------

 否定文の例

 Don't run here.

 Don't be noisy, Ken.

--------------------------------

 命令文は,丁寧さに欠けた表現であると聞き手に受け止められることもあるため,使用する場面の設定に配慮する必要がある。

 
 

d 疑問文のうち,
  be動詞で始まるものや
  助動詞(can,do など)で始まるもの,
  疑問詞(who,what,when,where,why,how)で始まるもの

 疑問文のうち,be動詞で始まるものや助動詞(can,do など)で始まるもの,疑問詞(who,what,when,where,why,how)で始まるものとは,yes-no 疑問文とwh- 疑問文のことである。

--------------------------------

 yes-no 疑問文は,一般動詞の文の場合にはdo を文頭に付ける。

 動詞の形の変形が必要なこともある。

 be動詞や助動詞の場合には,主語とbe動詞若しくは助動詞を倒置させる。

--------------------------------

 yes-no 疑問文の例

例1
 A: Do you like blue?
 B: Yes, I do.

例2
 A: Are you from Canada?
 B: No, I'm not.
       I'm from Australia.

例3
 A: Can you dance well?
 B: Yes, I can.

--------------------------------

 wh- 疑問文は,疑問詞を文頭に付けて,通常,文を疑問文の語順にする。

--------------------------------

 wh- 疑問文の例

例1
 A: When is your birthday?
 B: It is March 10th.

例2
 A: What time do you get up?
 B: I usually get up at 6:00.

--------------------------------

 第2の1(3)「話すこと[やり取り]」アで示されている目標を達成するのにふさわしい,自分や相手のこと及び身の回りの物に関する事柄についての疑問文を取り扱うようにする。

--------------------------------

 音声で十分慣れ親しませた上で疑問文とその応答の仕方などを言語活動の中で活用できるようにする。

 第2の2(1)ア(エ)「文における基本的なイントネーション」で解説したとおり,通常,yes-no 疑問文は上昇調のイントネーションで発音され,wh- 疑問文は下降調のイントネーションで発音されることに留意する。

--------------------------------

 小学校の外国語科では,or を含む選択疑問文,may やwill などの助動詞で始まる疑問文,does やdid で始まる疑問文、which やwhose などの疑問詞で始まる疑問文は扱わない。

 
 

 代名詞のうち基本的なものを含む文とは,I,you,he,she などの基本的な人称代名詞を含む文のことである。

 代名詞を含む文は,基本的な表現として扱い,代名詞を独立して指導することはしない。

--------------------------------

 代名詞を含む文の例

例1 I want a new ball.

例2
 A: Where do you want to go?
 B: I want to go to Italy.

例3 This is my hero.
    She can swim fast.
    She is cool.

--------------------------------

 なお,he やshe などの人称代名詞を含む文を扱う際には,児童の発達の段階を考慮して,その場にいない人を話題にするなどの場面設定をし,児童が he,she などの使い方を言語活動を通して分かるようにするとともに,文法の解説をしたり複雑な文になったりしないように留意する必要がある。

 
 

 動名詞や過去形のうち,活用頻度の高い基本的なものを含む文とは,動名詞や過去形を含む文のうち,五つの領域別の目標を達成するのにふさわしい表現のことである。

 小学校の外国語科においては基本的な表現として動名詞や過去形を含む文を指導する。

--------------------------------

 動名詞や過去形を含む文の例

例1 I am good at swimming.

例2 I enjoyed fishing.

例3 I went to Okinawa.
    I saw the blue sea.
    It was beautiful.

--------------------------------

 小学校の外国語科においては,動名詞や過去形を文から取り出して指導することはしない。例えば,好きなものを伝えるときに,“I like playing tennis.”と表現することを指導するが,playing tennis の部分に焦点をあてて,動名詞の使い方を理解させ,“Playing tennis is fun.”などの異なる表現の中で活用することを指導するわけではない。

 一方,中学校の外国語科においては,動名詞や過去形は「文法事項」として扱われ,使い方の理解を深めると同時に,別の場面や異なる表現の中で活用できるように指導することとしている。

 
 

 文構造はここに示すものを扱うこととする。

 文構造の記述には,文の構成要素を示すために主語や動詞,目的語,補語の用語を用いている。

 
 

 [主語+動詞]の文は,構成要素が二つの単純な文構造であるが,副詞句や前置詞句などが加わると意味の理解が難しくなる場合がある。

 主語と動詞を的確に捉えることができるよう指導する必要がある。

--------------------------------

例1 I sometimes get up at 6:00.

例2 I went to Okinawa.

 
 

 [主語+動詞]に補語が加わった文構造のうち,動詞がbe動詞の場合の文構造を扱う。

--------------------------------

 主語+be動詞+名詞

 My name is Sakura.

 David is a good tennis player.

 My best memory is our school trip.

--------------------------------

 主語+be動詞+代名詞

 This is me.

--------------------------------

 主語+be動詞+形容詞

 I am happy.

 Ken is strong.

 It was fun.

--------------------------------

 中学校の外国語科においては,[主語+動詞+補語]の文のうち,be動詞以外の動詞を用いた文構造を扱う。

--------------------------------

 主語+be動詞以外の動詞+名詞

 The boy became an astronaut.

 The girl became a pianist.

--------------------------------

主語+be動詞以外の動詞+形容詞

 You look nice in that jacket.

 Tsuyoshi felt happy when a lot of people came to his concert.

 
 

 これは,[主語+動詞]に目的語が加わった文構造である。

--------------------------------

(a)主語+動詞+名詞

 I like apples very much.

 I usually wash the dishes.

--------------------------------

(b)主語+動詞+代名詞

 This is my cap. I like it.

 I like baseball.
 I play it on Saturdays.

--------------------------------

 そのほかに,第2の2(1)エ(ア)で示すように,基本的な表現として,動名詞などを含んだ文や,動詞が過去形である文も扱う。

 主語+動詞+動名詞

 I like playing the piano.

 I enjoyed swimming.

--------------------------------

 また,動詞がwant であるとき,目的語として,名詞だけではなく,名詞的扱いとなるto 不定詞をとることがある。

 want+to 不定詞を取り扱う場合には,児童の発達の段階を考慮して,五つの領域別の目標を達成するのにふさわしい表現として指導するように留意する。

 I want to go to Italy.

 I want to be a vet.

 
 
 
 
→ 小学校外国語編
目次
→ 小学校学習指導要領(2017)目次
→ 学習指導要領ナビ
トップページ