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(ア) 活字体で書かれた文字を見て,どの文字であるかやその文字が大文字であるか小文字であるかを識別する活動。

 この事項における「識別する」とは,活字体で書かれた文字の中から,例えばA,B やa,b という文字を見て,それらが,/ei/,/bi:/ を表した文字であると認識することである。

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 活動としては,例えば,
 自己紹介の場面で,
 自分の名前を
  “My name is Haruna.”と紹介した後,
  “H, a, r, u, n, a.”と
 自分の名前の綴りを言って,
 自分の名前を相手にしっかりと伝える
 活動等が考えられる。

 この活動を行うために,例えば,
 文字を一文字ずつ読んで
 音声に慣れ親しんだ後,
 a p c d o g u w c a t x p などと
 不規則に並んで書かれた活字体
 の文字を見ながら,

 という音声を聞いて
 該当する箇所(dog)を丸で囲む
 などの活動に取り組むことが考えられる。

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 この事項は「読むこと」の活動のうち最も基本的なものであり,丁寧で確実な指導が必要である。

 例えば,歌やチャンツなどでまずは音声に十分に慣れ親しませたり,身近な場所にある看板や持ち物に記されている活字体で書かれた文字に意識を向けたり,先に示したような活動に取り組ませたりすることを,単元を通して複数の授業において繰り返し取り扱うことが大切である。

 
 

(イ) 活字体で書かれた文字を見て,その読み方を適切に発音する活動。

 この事項における活動は,(ア)の活動と併せて行うこともできる。

 例えば,(ア)で示した自己紹介の場面における活動において,“My name is Haruna. H, a, r, u, n, a.”と児童が自分の名前の綴りを発音する活動がそれに相当する。

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 この事項における「読み方」とは,文字そのものを表す際の文字の名称の読み方を指す。

 例えば,a やb であれば,/ei/ や/bi:/ という発音のことである。

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 なお,第2の1(2)「読むこと」イで述べたとおり,英語の文字には,名称以外に,語の中で用いられる場合の文字が示す音がある。

 文字の音の読み方は,(ウ)や(エ)の言語活動を行う際に,文字を識別し,語句の意味を捉えることに役立つ。

 文字の音の読み方を指導する際は,文字の名称の読み方との混同や種類の多さによる混乱から難しさを感じることがないよう留意する必要がある。

 また,文字がもつ音のうち代表的なものを取り上げて,歌やチャンツを使って,文字には名称と音があることに気付かせ,次の(ウ)や(エ)の言語活動につなげることが大切である。

 そのため,例えば,k やt が/k/ や/t/ と発音することを ‘koala’や‘ten’などの簡単な語を使って音声に慣れ親しませた後,k やt で始まる思い付く単語を,ペアやグループで協力しながら制限時間内にできる限り多く言わせる活動などが考えられる。

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 なお,発音と綴りを関連付けて指導することは,多くの語や文を目にしたとき,苦手意識をもったり学習意欲を低下させたりすることなく,主体的に読もうとするようになる上で大切なことの一つであるが,中学校の外国語科で指導することとされている。

 
 

(ウ) 日常生活に関する身近で簡単な事柄を内容とする掲示やパンフレットなどから,自分が必要とする情報を得る活動。

 この事項では,例えば,海外旅行のパンフレットを模した紙面を読んで,行きたい国で有名な食べ物やお勧めの季節などの情報を得る活動や,テレビ番組欄を模した紙面を読み,曜日や見たいスポーツ(スポーツ番組名)などの情報を得る活動に取り組むことを示している。

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 この事項では,情報を得る際に読ませるものとして,「掲示やパンフレット」という例示をしている。

 掲示やパンフレットでは,伝えたい情報を読み手に効果的に伝えるために,写真や絵などの視覚材料を示した上で,当該情報が語句や短い文で分かりやすく示されていることが多い。

 つまり,この活動において児童に読ませる英語は,語句や1〜2文程度の単文を示しているということである。

 また,理解の助けとなるよう,その英語が表す内容と関連した絵や写真などを付記することも必要である。

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 また,簡単な語句や基本的な表現を読むということは,それらの語句等を音声化することが含有されている。

 

 したがって,例えば

 “We have a snow festival in a city.”
 という文を読ませる活動
 に取り組ませる場合,
 その前段階として,

 それぞれの語(we,have,snow など)と
 表現(We have 〜 in 〜.)について
 音声で十分に慣れ親しむ活動,

 (イ)に示した

 活字体で書かれた文字を見て,
 その読み方を適切に発音する活動,

 絵カードに語を書き添えて
 それを使用し続ける
 などにより,
 語を一つのまとまりとして
 徐々に認識する活動

 などに取り組ませておくことが,
 推測しながら読ませる上でも
 必要である。

 
 

(エ) 音声で十分に慣れ親しんだ簡単な語句や基本的な表現を,絵本などの中から識別する活動。

 この事項においては,
 「絵本」という例示をしている。

 絵本には,
 内容理解を促すための絵や写真が
 ふんだんに使用されている
 ということのほか,
 主題やストーリーがはっきりしている
 という特徴がある。

 したがって,
 「絵本」という例示により,
 児童に複数の文を読ませる際は,
 何らかのテーマについて
 話の展開が
 分かりやすく書かれているもの
 を読ませること
 の必要性を示している。

 加えて,
 絵本には,
 同じ表現が意図的に
 繰り返し示されている
 という特徴もある。

 

 したがって,
 児童には,例えば,
 将来の夢について書かれた英語を
 読む活動の場合であれば,
 複数の登場人物が,どの人も,

 “I want to be a 〜.”
  (就きたい職業),

 “I can 〜.”
  (その職業に就きたい理由),

 “I want to 〜.”
  (その職業に就いてしたいこと)

 などと言っている英文を読ませるなど,
 同じ表現を繰り返し使って
 書かれている英文を読ませること
 の大切さも示している。

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 以上のことから,
 この事項における活動で
 読ませるテキストタイプとしては,
 絵本のほか,
 日記や身近な事柄についての紹介文
 なども考えられる。

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 また,
 この事項が示している活動には
 大きく二種類ある。

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 一つ目は,
 文を読んで,
 その中から
 音声で十分に慣れ親しんだ
 簡単な語句や基本的な表現
 を識別する活動である。

 この活動を行う前段階として行う
 基礎的な活動としては,
 次のようなものが考えられる。

 絵本の読み聞かせを,
 児童とやり取りしながら行う中で,
  “What color is this? Yes! It's red.”
 と色に着目させるやり取りをする。

 この段階では多くの児童は
 絵本の絵を見ながら答えている
 と思われるため,
 先の質問に答えさせた後,
 絵本の文を指しながら,
  “Where is‘ red’? red, red, red ...”
 と問い掛ける。

 そのことで
 絵ではなく文に着目させ,
 文中にある‘red’を見つけさせる。

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 二つ目は,
 音声で十分に慣れ親しんだ
 簡単な語句や基本的な表現
 で書かれた文を読んで,
 その意味を捉える活動である。

 活動としては
 次のようなものが考えられる。

 小学校生活の思い出アルバムを
 作成し,
 互いのアルバムを読んで,
 相手の思い出が何なのかを
 理解する活動
 を設定する。

 理解を助ける写真などとともに,
  “I enjoyed jumping rope.
  It was exciting.”
 という2文の英文を読ませる。

 そして,
 書き手の一番心に残っている学校行事
 は何で,
 その行事で楽しかったことは何か
 などの主な内容を捉えさせる。

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 どちらの活動に取り組ませる場合も,その前段階として,読ませる語句や表現に音声で十分に慣れ親しませることは必須である。

 また,活字体の読み方を想起させたり,児童の実態によっては,第3学年の国語科で日本語のローマ字表記を学習していることを踏まえ,例えば「カ」が ka と書かれていることか ら/k/ の音など,英語の文字の音を想起させたりすることは,読み方を推測させる上で有効な支援といえる。

 
 
 
 
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