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(ア) 文字の読み方が発音されるのを聞いて,活字体の大文字,小文字を書く活動。

 本解説第2部第2章第2節の1(2)アで述べたとおり,英語の文字の「読み方」には,名称の読み方と音の読み方の二種類があるが,この事項における「読み方」とは文字の名称の読み方を指す。

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 例えば,電話でのやり取りの場面において,活字体によるメールアドレスをお互いに伝え合い,それを書くという活動が考えられる。

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 この事項は「書くこと」の指導事項のうち最も基本的なものであり,最終的には,児童が何も見ることなく自分の力で活字体の大文字,小文字を書くことができるように指導する必要がある。

 「書くこと」は個人差が大きく出やすい領域であり一層の丁寧な指導が求められる。

 他方,書いたものは残るため,児童に自身の成長を認識させやすく英語学習に対する自信をもたせるきっかけになり得るという側面もある。

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 以上のことを踏まえ,以下のことに留意して指導に当たることを大切にしたい。

・ 「聞くこと」の活動により文字の読み方について十分慣れ親しませ,「読むこと」(ア)及び(イ)の活動により文字を識別したり発音したりさせ,その後,この事項の活動に取り組ませるという順序性を踏まえた指導を行う。

・ 活字体の大文字,小文字を一度に全て取り扱うのではなく,児童の実態に応じて一度に取り扱う文字の数や種類に配慮する。

・ いわゆる「ドリル学習」のような,単調な繰り返しの学習に終始するのではなく,何らかの書く目的をもたせたり,ゲーム的要素を取り入れたりするなど,児童の学習意欲を高める工夫をする。

・ 年間を通じて,全ての「書くこと」の活動において,文字を書くことができているか,できるようになってきているかを丁寧に見届け,指導に生かす。

 
 

(イ) 相手に伝えるなどの目的をもって,身近で簡単な事柄について,音声で十分に慣れ親しんだ簡単な語句を書き写す活動。

 次の(ウ)が「基本的な表現」を書き写すことを示していることに対して,この事項で書き写すものは,「簡単な語句」である。

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 具体的には,例えば次のような活動が考えられる。

 まず,諸外国の魅力などについて話される英語を聞いて,内容や使用されている表現を知る。

 その後,それらの表現に音声で十分に慣れ親しませてから,当該表現を使って,自分が行ってみたい国についてその国の魅力だと思うことを互いに伝え合う「話すこと[やり取り]」の活動に取り組ませる。

 そして,「読むこと」の活動により,国名を表す名詞を読んで意味が分かるようにした後,国名一覧を見ながら,自分が行きたい国の国名を表す語を書き写す。

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 また,この事項では,「相手に伝えるなどの目的をもって」書き写すように明記している。

 これは,「書き写す活動」という言葉から,ややもすると意味を考えさせたり目的をもたせたりすることなく,機械的に書かせるだけの指導に終始する可能性を危惧したためである。

 したがって,例えば先に例示した活動であれば,カードを作って行ってみたい国を紹介するといった目的をもたせ,装飾枠やイラストを付した国紹介カードに書かせるなどの工夫をすることが考えられる。

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 この事項は,(ア)に示した「活字体の大文字,小文字を書く活動」の延長線上にある事項と考えられる。

 したがって,アに示した,順序性を踏まえること,十分な時間を確保して四線上に書かせるようにすること,丁寧に見届け指導に生かすことなどは,この事項においても重要である。

 なお,これらのことは,(ウ)及び(エ)においても基本的に同様である。

 
 

(ウ) 相手に伝えるなどの目的をもって,語と語の区切りに注意して,身近で簡単な事柄について,音声で十分に慣れ親しんだ基本的な表現を書き写す活動。

 (イ)が「簡単な語句」を書き写すことを示していることに対して,この事項で書き写すものは,「基本的な表現」である。

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 具体的には,例えば次のような活動が考えられる。

 まず,一日の学校生活について話される英語を聞いて,内容や使用されている英語表現を知る。

 その後,それらの英語表現に音声で十分に慣れ親しませ,当該表現を使った「話すこと[やり取り]」の活動に取り組ませる。

 そして,紙面上で何人かの登場人物が書いている英文(We study/have English on Monday and Wednesday. We study/have English on Tuesday and Thursday. など)を読み,自分自身の学級で英語の授業がある曜日を表現できるよう,書かれている英文を見ながら一文を書き写す。

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 この事項においても,(イ)と同様,「相手に伝えるなどの目的をもって」取り組むことができるようにする。

 したがって,先に例示した活動であれば,何曜日に英語の授業があるとよいと思うか,体育や音楽の授業は何曜日がよいか又は何時間目がよいかなど,自分が理想とする時間割を書かせたり,自分と同じ時間割にした人を探したりするなどの目的をもたせる工夫をすることが考えられる。

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 また,この事項では,語と語の区切りに注意させることも指導する。

 英語では単語を一つずつ区切って書くことが日本語の表記方法と異なる点の一つである。

日本語の表記方法に慣れている児童は,語と語を続けて書いてしまう場合が少なくない。

 また,区切りについて指導を受けると,語と語の間のスペースを不自然に長く取って書く児童もいる。

 (ア)で示したように,一人一人の筆記の状況を丁寧に見届け,個別の指導に生かすことが肝要である。

 
 

(エ) 相手に伝えるなどの目的をもって,名前や年齢,趣味,好き嫌いなど,自分に関する簡単な事柄について,音声で十分に慣れ親しんだ簡単な語句や基本的な表現を用いた例の中から言葉を選んで書く活動。

 この事項について,(ア)〜(ウ)との相違点や共通点について二点説明する。

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 一つ目は,「書き写す」と「書く」についてである。

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 (イ)及び(ウ)が「書き写す」としていることに対して,この事項では「書く」としている。「書き写す」とは,語句や文を見ながらそれらをそのまま書くことである。

 一方で,「書く」とは,例となる文を見ながら,自分の考えや気持ちを表現するために,例となる文の一部を別の語に替えて書くことである。

 例えば,
 自分が好きな人やことを
 他者に紹介する活動において,
  “I like baseball.
  My favorite baseball player is 〜.”
 を例としながら,
 自分の考えや気持ちを表現するために,
 語順を意識しながら,
 baseball などの語を替えて,
  “I like music.
  My favorite musician is 〜.”
 と書くことである。

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 二つ目は,(ア)とこの事項の関係についてである。

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 (ア)もこの事項も,「書き写す活動」ではなく「書く活動」としている。

 しかし,(ア)は,何も見ることなく児童が自分の力で書くことができるようになることを求めている。

 一方で,この事項では,「例の中から言葉を選んで」と示していることからも分かるように,その段階までは求めていない。

 換言すれば,この事項における活動に取り組ませる際は,児童が,言葉を選んで書くことができるよう,例となる語句や表現を示すことが必須となる。

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 最後に,児童が書く又は書き写す英語についてである。

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 (ア)は活字体を,(イ)は語句を,(ウ)は文を,それぞれ書いたり書き写したりすることを示している。この事項における活動においては,主に文を書くことを示している。

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 なお,名前を書かせる際には,第3学年の国語科において日本語のローマ字表記が指導されていることを踏まえた工夫を行うこととする。

 例えば,日本語のローマ字表記の知識を活用して,“My name is 〜.”や“I am from 〜.”など の表現など,人名や地名などの固有名詞を含む表現を書き写させるようにするなど,学習のしやすさを促す工夫が考えられる。

 その際,人名や地名のローマ字表記は英語の中でも用いることを指導するようにする。

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 日本語のローマ字表記については,「ローマ字のつづり方」(昭和29年内閣告示)を踏まえて指導することとなっている。

 ここでは,「一般に国語を書き表す際には第1表に掲げたつづり方によるものと」し,「従来の慣例をにわかに改めがたい事情にある場合に限り,第2表に掲げたつづり方によっても差し支えない」こととされている。

 

 第3学年の国語科においては,

 第1表(いわゆる訓令式)により,
 日本語の音が
 子音と母音の組み合わせで
 成り立っていること
 を理解すること,

 第2表
 (いわゆるヘボン式と日本式)により,
 例えば
 パスポートにおける氏名の記載など,
 外国の人たちと
 コミュニケーションを行う際に
 用いられることが多い表記の仕方
 を理解することが重視されている。

 このことを踏まえ,
 高学年の外国語科においては,
 国際的な共通語として
 英語を使用する観点から,
 できるだけ日本語の原音に近い音を
 英語を使用する人々に
 再現してもらうために,
 第2表に掲げた綴り方のうち,
 いわゆる「ヘボン式ローマ字」で
 表記すること
 を指導する。

 
 
 
 
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