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ア 関心のある事柄について,簡単な語句や文を用いて即興で伝え合うことができるようにする。

 「話すこと[やり取り]」は,今回の改訂で新たに設定された領域である。

 「話すこと」の言語活動では,日常の会話から討論に至るまで,話し手と聞き手の役割を交互に繰り返す双方向でのコミュニケーションの機会が多いことを踏まえ,後述する(4)の「発表」とは別に「やり取り」を加え,その目標を設定した。

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 この目標では,小学校の外国語科の「話すこと[やり取り]」の目標ア「基本的な表現を用いて指示,依頼をしたり,それらに応じたりすることができるようにする」を受け,「関心のある事柄」について即興で情報を交換したり,お互いの考えや気持ちなどを伝え合ったりすることができる力を身に付けさせることを示している。

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 ここでは,目標を達成するための重要な条件として「即興で」が掲げられている。

 これは,実際のコミュニケーションの場面においては,情報や考えなどを送り手と受け手が即座にやり取りすることが多く,英文を頭の中で組み立てる時間を長く取れないからである。

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 この目標では,「関心のある事柄」として,スポーツ,音楽,映画,テレビ番組,学校行事,休日の計画,日常の出来事など,身の回りのことで生徒が共通して関心をもっていることを扱うこととしている。

 また,「簡単な語句や文を用いて」とは,「読むこと」でも解説したとおり,小学校での学習やこれまでの経験の中で触れてきた語彙や表現を含め,中学校で扱う語句や文を用いることである。

 これは,次のイ及びウについても同様である。

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 「即興で伝え合う」とは,話すための原稿を事前に用意してその内容を覚えたり,話せるように練習したりするなどの準備時間を取ることなく,不適切な間を置かずに相手と事実や意見,気持ちなどを伝え合うことである。

 やり取りを行う際は,相手の発話に応じることが重要であり,それに関連した質問や意見を述べたりして,互いに協力して対話を継続・発展させなければならない。

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 なお,小学校の外国語科の「話すこと[やり取り]」の目標ウには「その場で質問をしたり質問に答えたりして,伝え合うことができるようにする」という内容が含まれており,「その場で」について,「小学校学習指導要領解説 外国語活動・外国語編」では,「相手とのやり取りの際,それまでの学習や経験で蓄積した英語での話す力・聞く力を駆使して,自分の力で質問したり,答えたりすることができるようになることを指している」とした上で,「ここでのやり取りが,中学校の外国語科での簡単な語句や文を用いて即興で話すことへとつながっていく」と中学校への接続に言及していることにも留意が必要である。

 
 

イ 日常的な話題について,事実や自分の考え,気持ちなどを整理し,簡単な語句や文を用いて伝えたり,相手からの質問に答えたりすることができるようにする。

 この目標では,小学校の外国語科の「話すこと[やり取り]」の目標イ「日常生活に関する身近で簡単な事柄について,自分の考えや気持ちなどを,簡単な語句や基本的な表現を用いて伝え合うことができるようにする」を受け,自分が伝えようとする事実や考え,気持ちなどのまとまった内容を伝えた上で,その内容に対する質問に応答するなどして相手とのやり取りを展開することができる力を身に付けさせることを示している。

 この目標は,限られた時間でまとまった内容を整理して伝えることができることと,伝えた内容に対する質問に応答することができること,の二つの要素で構成されている。

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 この目標での「日常的な話題」とは,生徒の日々の生活に関わる話題のうち,生徒自身や家族に関すること,生徒の興味・関心の対象となることや社会生活で必要なことなどである。

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 事実や自分の考え,気持ちなどを「整理」するとは,聞き手が理解しやすいように伝える項目を精選したり適切な順序に並べ替えたりするなど,話す内容をまとめ,コミュニケーションの見通しを立てることを意味している。

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 また,「相手からの質問に答える」とは,単に質問に対する返答で対話を終わらせるということではない。

 アで培われた,対話を継続・発展させる力を活用することを含んでいる。

 音声によるコミュニケーションにおいては,流れを大切にしながら伝え合うことが重要であり,限られた時間で意見や考えをまとめて伝えたり,質問や意見に対応したりしていくことが,円滑なコミュニケーションになることに留意する必要がある。

 
 

ウ 社会的な話題に関して聞いたり読んだりしたことについて,考えたことや感じたこと,その理由などを,簡単な語句や文を用いて述べ合うことができるようにする。

 この目標では,聞いたり読んだりしたことを基にやり取りを展開していく力を身に付けさせることを示しており,聞いたり読んだりして得た情報や考えなどを共通の話題とし,生徒がお互いに質問したり個人又は集団で考えや感想,理由などを交換できるようになることを重視している。

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 この目標での「社会的な話題」とは,「聞くこと」ウや「読むこと」ウにおける社会で起こっている出来事や問題に関わる話題のことであり,広く国内外で起こっている事象で,多様な考え方ができるようなものを取り上げる。

 具体的には,例えばエネルギー問題や環境問題などが考えられ,「聞いたり読んだりしたこと」とは,そうした話題に関する教師や生徒の発話,映像や音声の教材,ニュースや新聞記事,図表,ポスター,電子メールなど,様々な音声媒体や文字媒体による情報や考えなどを意味している。

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 また,考えたことや感じたこと,その理由などを「述べ合う」とは,共通の話題をきっかけとして,ペアやグループになってお互いに意見を出し合ったり,情報の交換をしたりしながら,話題に関する理解を深め,意見をまとめたり,合意できる部分やできない部分を整理し,その理由を述べ合ったりなどすることを示している。

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 ここでは,話す際に必要となる表現や情報などを得るために聞いたり読んだりするという目的を明確にするなど,他の領域の言語活動と有機的に関連させることが大切である。

 
 
 
 
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